これが本当の地域コミュニティ -後編-

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[人との別れ、町、家との別れ]

別れが寂しいというのは、「人との別れ」だけではない。
思い出が詰まった町、家、庭の植物たちとの別れもある。

準備を進める中、田舎家の処分も考えなければならない。
具体的にどうしたのか、詳しくは知らないけど、手放したのは確か。

その際、「鑑定評価書」を取ったと聞いた。
鑑定評価という言葉を身近で聞いたのはその時が初めてだった。
古い平屋で裏庭が広い。バリアフリーの逆を行くような段差のある家だった。

「鑑定評価額」は本当に小さなものだったみたいだけど、
長年暮らしてきた祖母にとっての価値は、貨幣額で示すことなんてできない。


裏庭のあじさい



[別れの朝]

東京から迎えに行ったのは、祖母が旅立つ2日前のこと。
ここへ来るのもこれが最後・・・
町は何も変わっていなかった。

「おばあちゃん。元気ね!?」
いつものように、声が掛かり、町の「家族」と庭先で立ち話。
涙をぐっとこらえて、祖母はいつものように笑っていた。

大きな荷物の発送は、「さとちゃん」に託してある。
必要最小限の荷物にまとめて、旅立ち前夜はいつもより早めに床についた。
眠れたのかはわからないけど。

朝5時過ぎ、戸締りを確認して、玄関でゆっくりと靴を履く。

町は小さい。大きな荷物を運べば、きっとみんなに気付かれてしまう。
だから出発は早朝が良い。そう提案したのは祖母だった。

うっすらと夜が明ける頃だった。
最後にもう一度、家の前のいつもの風景を眺める。

田んぼ、山、川、町の「家族」が眠る家々・・・


お ば あ ち ゃ ん 今 ま で あ り が と う


い つ ま で も 元 気 で ね !



田んぼの向こうの石垣に
布を継ぎ合わせて作った大きなメッセージ。

気付いていたんだ。でも祖母の気持ちもわかっていた。
だから、そっと送り出してくれた。

それでも気持ちを伝えたいと思ってみんなで作ってくれたのだろう。
こんな温かい送り出し方があるんだ。自然と涙があふれた。

その時の感動は、今も色あせることがない。

地域のコミュニティって、本当はこういうことなのかもしれません。


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